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【雑学】日本書紀に記された謎の伊豆新島誕生の話

小笠原諸島に新島が誕生

2013年11月20日10時20分頃、噴火活動によって小笠原諸島西之島南東沖に新島が誕生しているのを海上自衛隊が発見*1。その様子は海上保安庁のサイト*2が詳しく、WMP形式で動画も配信*3してます。引用しやすいのでここでは朝日新聞がYouTubeにアップしている動画を。


小笠原の新しい島、誕生の噴煙 高さ300mに - YouTube

 活発な火山活動による新島誕生の様子はまるで神話の世界のよう。

日本書紀に記された伊豆新島誕生の話

 という訳で話題の新島ですが、日本書紀にも伊豆で新島が誕生したという話が記されているのはあまり知られていないと思うので、ここでご紹介。日本書紀天武天皇十三年(684年)十月条、白鳳地震の記述に続く、「伊豆嶋」の西北で三百余丈の土地が増え、一つの嶋となったという記述です。

日本書紀 天武天皇十三年(684年)十月条
『是の夕(ゆふべ)に、鳴(な)る声(おと)有りて鼓(つづみ)の如(ごと)くありて、東方(ひむがしのかた) に聞(きこ)ゆ。人(ひと)有りて曰わく、「伊豆嶋 (いづのしま) の西北(にしきた)、二面(ふたつのおもて)、自然(おのづから)に増益(ま)せること、三百余丈(みももつゑあまり)。更一(またひとつ)の嶋(しま) と為(な)れり。則ち鼓の音(おと)の如くあるは、神(かみ)の是の嶋(しま)を造(つく)る響(ひびき)なり。」といふ。』*4

 具体的に噴火があったとは記されてないですが、音の表現や自然に土地が増えて島になったということから、噴火によって島が誕生した記録である可能性はかなり高いんじゃないかなと。

しかし、鼓の音のような音がするのは、神がこの嶋を造る響きである、というのは幻想的な文章だなぁ。小笠原の動画では機体の音でよくわかりませんが、現場ではかなりの爆発音がしてると思います。まぁ伊豆の噴火音が畿内まで届いたとはさすがに思えませんが。

で、伊豆嶋の新島ってどこなの?

 この伊豆嶋の新島がどこなのか?小山真人氏が『「伊豆嶋」が伊豆大島を指すかどうかは実は明らかでない(小山・早川、1996)。現時点では、伊豆諸島のどこかの島で噴火があり、新しい陸地ができたと広く解釈しておく方がよいだろう』*5と書いているように、実は結論が出ておらず謎のままなんです。

いくつか説があるのでご紹介。 

(1)伊豆大島西岸新島村野増村の地区 

大森房吉氏が『大日本地震史料 : 増訂. 第1巻』で、新たに増えた島は伊豆大島西岸新島村野増村の地区と見るのが然るべき*6って書いてます。が、根拠は特に書いてない。名前がそんな感じだから、という気もしないでもない。 

(2)伊豆大瀬崎 

都司嘉宣氏が収集した『東海地方地震津波史料(Ⅰ・上巻)-静岡県・山梨県・長野県南部編-』の白鳳地震の項に、大瀬神社に関する話として白鳳地震と同時期に出来た新しい島が枇杷島 (陸繋島になる前の大瀬崎) であるという話*7があります。伊豆諸島じゃないですが、伊豆半島の西北ではあります。大瀬崎には大瀬崎火山がある*8ようですが、かなり古い時代に活動してたようなので、当時活動したとはあまり思えないが…。 

(3)八丈島 

『東海地方地震津波史料(Ⅰ・上巻)-静岡県・山梨県・長野県南部編-』には、『伊豆大瀬崎と八丈島にこの時土地隆起するという伝説あり』とあります。ということで、八丈島も候補地の一つです。元ネタの『八丈実記』によれば、八丈富士 (西山) がこの時噴火した、と。

地震とセットで記録されている意味

 日本書紀の新島誕生の記録ですが、白鳳地震の記述に続いて記されました。

白鳳地震は684年に発生した南海トラフ巨大地震と推定される地震で、南海トラフ巨大地震のなかでも文献資料に残るものとしては最も古い地震です。地域的に南海地震によると思われる被害のみ記載されていますが、遺跡に残る地震の痕跡などから、東海地震も同時期、もしくは連動して発生したと推定*9されてます。

今も地震多発期に入ったと言われてるので、やはり地震が多く起こる時期には火山活動も活発になるみたいですね。3.11以降、関東直下型地震や南海・東海地震のような南海トラフの大地震の発生が懸念されてます。今後もしばらくは地震や火山活動に注意が必要そうです。

以上おしまい

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